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国売りたもうことなかれ[論戦2005]

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櫻井よしこ
ダイヤモンド社の論戦9巻目。今回は「国売りたもうことなかれ」というタイトルで、近隣諸国外交と広がる中国の力に焦点をあてたものが多く取り上げられていました。櫻井さんの「中国の脅威に対し、揺るがぬ日本をつくる」という意見が強く述べられている章が多くみられますが、「日本が力を失わないためどうあるべきか」という根本的な問題について、教育、人材について触れています。「序」の、「日本人の覚醒なしには、この国は日本であることを放棄し、無国籍国家としてあきらめの海に沈み行くと思えてならない」という一文は非常に印象的で、共感しました。外交に長けているとは嘘でも言えない「日本」。どうしても「鎖国」以来抱えている問題のように感じられます。敗戦後、国内が立ちなおり、ITでより世界と交わる機会が増える現代社会は経済的にも政治的にも避けられません。なんだかんだ問題を解決、または先送りにし、危機には直面していない(もしくはなんとなく切り抜けてきたか)過去ですが、何を危機と見るかによっては既に直面しているといえます。櫻井さんは、「国難」という表現を用いていましたが、「国難」という言葉には、「外的な危機と共に、内的な危機」も含まれると思います。内的な危機は、メディアのあり方、教育、国民一人一人の意識などに根ざしていると思われます。内的な危機こそ、急速に解決するよう努めなければ外的危機に対応できるわけがありません。外的要因を嘆く前に、剣のさびはきちんととっておかなければいけません。経済成長よりも表面にあらわれにくく、指数では測れない問題も見据えながら物事をみていくことの大切さを感じました。
―「人間は、生まれたときには単なるヒトだが、教育によって人間へと育っていく。」―以下、印象にのこった点を取り上げます。



教育について
この国は人材によって開かれる。人材は教育によって育まれる。そして教育は過程から始まる。家庭生活の見直しと学校改革が対になって初めて・・・(P.129)
教育は信頼できる現場の教師に任せるのがいちばんである。その教師を支えるのが校長であり、監督するのが教育委員会なのであろう。だが、教育委員会への評価は功罪半ばする。教育委員会は往々にして、文科省の意向にあまりにも強く影響されるからだ。現場教師の“暴徒”による行き過ぎた半日教育などは慎まなければならないが、かといって、文科省の指示をひたすら守り“学力否定”のゆとり教育政策によって、教育をつぶさせてはならない。(P。38)

外交について
かつて、ニクソン政権下で米国は劇的な中国訪問を成し遂げた。共和党のニクソン大統領が訪中したのは1972年。だが、米中国交樹立は79年1月1日、民主党のカーター政権のときだ。米国の政治家たちが、ニクソンの個人的名誉を離れ、時間をかけて交渉し、政党を超えて国益を守り、国益に基づいて外交を推進した一例だ。小泉首相には、この例から学んでほしい。自らの欲のために、国を売る外交はけっして許されないと認識してほしいものだ。

(歴史から学ぶといっても、何が起こるかということは予期できないので、政策が成功するか失敗に終るかはやってみるまではわかりませんが、首相の地位にある人は「国の利益」を優先して政策を進めてもらいたいと思います。特に、小泉首相は本人を歴史上の人物と重ねることがよくありますが、歴史上のカリスマに習う前に、歴史上の出来事から学び、総合的に考えてほしいと思います。今日、選挙勝利の後の内閣人事発表があったのでなおさらです。)

中国の不法を許す政府とメディアの姿勢
資源問題について、「個人の行為が日中の最近の摩擦の要素となり、日中関係に影をおとすというなら」・・・「中国側が行ってきた資源調査は国家ぐるみの不法行為」であり、メディアはその重要性を伝え切れていないという。

歴史教科書問題
「報道ステーション」では、古館氏が「私は思い違いをしていました」とカメラ目線で語り始めた。竹島について、扶桑社の教科書に「韓国が不法占拠している」と書かれているのだと思っていたら、じつは文科省がそう書き直させていたということを、語ったのだ。古館氏の思い違い発言には「作る会」こそが率先して「不法占拠」という書いてはならないことを書いたのだと思っていたら、そう書かせたのは文科省だった。ひどい検定だ、という驚きのニュアンスがこめられていた。結局、古館氏の陥っていた思考パターンは思い違いというより思い込みなのではないか。(P.188)

(この章は一番おもしろい切り込み方でした。櫻井さんの意見では歴史上から照らして考えても「対立している」というだけのニュアンスではなく「不法占拠」という言葉も必要な要素だといいます。私も今まで「思い込み」をしていたので、そのとき報道ステーションを見ていたかはっきり覚えていませんが、「思い違いをしていました」というコメントに違和感を覚えない一人だったと思います。「どちらがどういう立場」という単純化した報道により、視聴者に勘違いをもたらす一例かもしれません。竹島について、、、この前韓国人と話したとき、「「竹島」というのはもともと2つあって、日本は名前が一緒だったので韓国が持っていた島も日本のものだと勘違いしてそう主張し始めた」という主張を聞きました。韓国でどのように竹島について教育が行われているかわかりませんが、両国の主張が完全に食い違っているということは明らかです。そして、両国の国民に共通していえるのは、自分で竹島の研究をし、当時の資料を深く調べたりしない限りは、どちらも「政府」「メディア」の伝え方により日常耳にする事柄から意見が出来上がってしまうということです。)
by congeniality | 2005-11-01 07:45 | Review
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