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国家の品格

藤原正彦(新潮新書、2006)国家の品格_e0026645_23665.jpg日本から水10!のDVDと一緒に送ってもらった話題の本。
ここ数日間ナショナリズムを調べるために英語の文献で苦労していたので、自分の日本語を読む速さに感動しました笑 母国語とはすばらしい・・・w
内容については、壮大なテーマといってもいい精神的なトピックを中心として、個人から国家までの幅広い話題がここまで短くまとめられていて分かりやすかったです。且つ、構成も~~の理由は以下6つ、~~の要素は以下~個、というように書かれているので追っていきやすい。特に証明せずに断言してしまっている箇所もありましたが、本書の中にも「人を殺してはいけない理由」など明確にはみつからないが、だめなものはだめなのだ、という人が根拠なしにも受け入れるべき理由とそういった教育についての記述があったほどなので、作者の意見を述べるにはある程度の断言なしには進まない話でもあります。もちろん大部分は論理的に説明がなされているし、いくら第二章が「「論理」だけでは世界が破綻する」と言っているとしても、論理の大切さももちろん認めた上での「論理の出発点」の重要性を強調しているだけのことです。作者自身もp95で「論理とか合理を否定してはなりません、これはもちろん重要です、これまで申しましたのは「それだけでは人間やっていけない」ということです」、と述べています。


「武士道」や「国柄」などという言葉はニュアンスとして、<右>という感じがしますが、この本で作者が述べたいことは全くそういう排他的国家主義の類ではなく、各々の道徳を自分のオリジンの中にしっかり見出して論理の出発点にしましょう、ということだと思います。そういった意味でも「行間を読む」ことの大切さと「行間を自分の経験と意見に基づいて読む力」の大切さも身に沁みました。

以下、個別に印象的だった部分を挙げます。
@量的思考をするには知識や情緒、そして大局観が必要になる(p60:英語を学ぶ=国際人というステップは間違っており、国語の強化=人間の内容の充実=国際人になるという記述に続いて。)
@(論理というのはAがあってそれに対してB、そしてそのBに対してC、と展開していく)出発点を適切に選ぶということは、総合判断力が高まるということです。(p149)
論理的に正しいものが沢山ある中からどれを選ぶか、それはいかに適切に出発点を選択できるか、それは情緒力にかかっている(p150)
@情緒力は蓄積しない(例えば、知識は歴史を重ねるごとに蓄積していき後の人間がそれを使うことができるけれども情緒力は育っていくときに同時に身につけなければならないものという意味で)(p154)
他にも、@国家の底力を失っては大変という内容(櫻井さんの「国売りたもうことなかれ」に通じるものがありました)@天才を輩出する土地柄は「美」があるということ→そういった「美しさ」や「今日明日必要ではない文学や数学の証明問題などにとりくむこと」が実は底力をはぐくむことになるとも言えるということ(確かに、現代には本屋にもいわゆる文学よりも、how to bookが多い気がします) 


こうやってメモ程度に書き出したところでちっとも論理的ではないので本書を読んだほうがはやいですが。あともう一点、イギリスが言うことに世界は耳を傾けるのに日本の言うことにはあまり耳を傾けてもらえないのは何故か?というような内容があり、理由として、「いくらここ一世紀経済が停滞しているとはいえ、伝統を重んじる」イギリスには信頼がある、といったことが挙げられていました。そういう面で、「経済発展」を除いたら何ものこらなくなってしまう空っぽの国にならないように、「精神」「伝統」も受け継いでいくことの重要性を感じます(ただし、それも間違った方向にとらえて靖国参拝しようというようなことではなく!そこで間違った方向にとらえないために先ほどから挙がっている出発点の大切さがあるのではないかと思います。)
by congeniality | 2006-03-17 02:06 | Review
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