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Nationalism, History and Theory

Paul Lawrence, 2005, London: Pearson Longman
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「ナショナリズム」という論理が歴史上どのように変化していったか、という内容について述べている本。とても分かり易い!!ちなみにもっと分かり易く言うと、History and Theoryというよりは History of Theoryという感じの本です。ナショナリズムは個別の国に個別に存在し、その歴史を書く人間もどこかのナショナリティーに属している以上は客観的に見ることがなかなか難しい問題です。科学的な証明が社会学にも用いられるようになってから1950、60年代にEarnest Gellnerを中心としてでてきた新しい見方というのがClassical Moderninstと総称されています。その革新的な見方とは「世界共通に応用できるナショナリズムの”原因”をさがす」というもので「その原因とはindustrialised worldの中にある」(=つまりナショナリズムとは現代社会の産物である)という論理です。Modernistの一般的見解では階級社会の後に出現した「国内の人々が共通の言語、教育、文化を共有するという社会」のもたらした”ナショナリズム”こそが国家を生んだ、ということになっています。
しかし一見新しく、新鮮に見えるこの論理ですが、様々な問題と欠陥をはらんでいます。この論理に当てはまらない例外があまりにも多いということも弱点の一つです。また彼ら自信の中でも詳細については意見が食い違っており、他にもナショナリズムには「民族的」要素があると主張している別の論理も生まれています。ここで肝心なのはゲルナーはhistorianではなくpolitical scientistだったということ。やはり歴史とはそれぞれのパターンにそれぞれの原因や条件を当てはめて真実をみつけようとするもので、「重力」のように世界のどこでもあてはまる法則を考える科学とは学問の種類が少しちがうということです。

ちなみに一つ前のレビュー↓国家の品格p113で丁度ナショナリズムに対しての面白い記述があったので引用しておきます。
一方、私の言う祖国愛は、英語で言うところの「パトリオティズム」に近い。パトリオティズムというのは、自国の文化、伝統、情緒、自然、そういったものをこよなく愛することです。これは美しい情緒で、世界中の国民が絶対に持っているべきものです。ナショナリズムは不潔な考えです。一般の人は敬遠した方がよい。ただし、政治家とか官僚とか、日本を代表して世界と接する人々は当然、ある程度のナショナリズムをもっていてくれないと困る。世界中の指導者が例外なく、国益しか考えていないからです。日本の指導者だけが「ナショナリズムは不潔」などと高邁な思想を貫いていると、日本は大損をしてしまう。安全や羽意さえ脅かされる。一般の国民は、ナショナリズムを敬遠しつつ、リーダーたちのバランスあるナショナリズムを容認する、という大人の態度が必要になってくる。現実世界を見ると、残念ながらダブルスタンダードで行くしか仕方がないのです。無論、リーダー達の過剰なナショナリズムへの警戒は怠ってはなりません。

by congeniality | 2006-03-17 02:49 | Review
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